M&Aシナジーを実現するPMI

2016-05-29 16.40.29

M&A関連の書籍です。

PMIとは、「Post Merger Integration」(買収後の統合)を意味します。

つまり、「買収後に、買収企業と被買収企業との事業シナジー(相乗効果)を求めるために、ハード面(組織・人事制度等)やソフト面(企業・組織文化等)を統合していきましょうね、という内容の書籍となります。

 

そこで、「M&Aアドバイザーの仕事は、買収が成功したらおしまいなんじゃないの?」という疑問が湧いてくる事でしょう。

 

その通り、買収が成功しますと報酬をいただき、私の仕事はそこまでとなります。

もちろん、買収後のPMIについて、過去にコンサルティングを業務に含めるべきかどうか検討した事はあります。

しかし、そうしますと買い手のコンサルタントに対する依存心が強くなってしまい、自立したPMI活動が疎かになる結果、正常なグループ企業関係をかえって阻害する要因となりかねません。

ただでさえ、ポストM&Aにおいて経営者にインタビューをすると、M&Aの戦略自体が成功だったと回答する率は約3割と、とっても低いのです

逆に言えば、M&A戦略を取っても失敗率が7割ある、という事になるからです。

7割負ける戦略は、経営者として通常選択しない戦略であり、やる以上は逆に7割以上の成功可能性を求めるべきでしょう。

 

次の疑問として、「なぜ、M&Aは7割も失敗に終わるのか?」となります。

 

これには、様々な原因がありますが、最も多い原因は、「事業拡大や新事業着手をするにあたり、本当にM&Aが必要なのか?」という考察を、しっかりしていないからに他なりません。

また、実際にM&Aを進めるにあたり、「買収対象企業が、自社にとって本当に必要な会社なのか?」という考察を、しっかりしている会社が非常に少ない事も原因の1つです。

 

M&A戦略の必要性(不必要性)については、話し始めると長くなるので別の機会に記述したいです。

「買収対象企業が、自社にとって本当に必要な会社かどうか」を考察するにあたり、行う作業が「Feasibility Study (F/S)」となります。

F/Sとは、まさにPre-PMIであると考えます。

つまり、実際に買収してPMI活動を行うにあたり、PMI成功の可能性を探る作業となるわけです。

F/Sは、通常は買収監査に入る前にラフに行い、買収監査と同時並行して詳細に進めるべきものと考えます。

 

長く難しいお話になってしまいそうなので、平たく申し上げると、「M&Aアドバイザーは成功するM&Aを提案すべきで、そのためには買収後の事も視野に含めてアドバイスしなくちゃいけないんだよ」という事になります。

 

「M&Aにおけるポイントはしっかりした買収監査だ」、と考える方が、非常に多いのが現状です。

買収監査(Due diligence)とは、財務監査、法務監査、業務監査などが代表的なもので、これらはあくまで買収対象企業の実態を様々な角度から調査し、リスクマネジメントをするためのものとなります。

ですから、M&Aを実行するに際して買収監査をしないという事は、目を閉じて車の運転をするに等しい行為であり、非常に危険です。

ただ、買収監査は会計士・税理士、弁護士、経営コンサルタント等に依頼すれば、粛々と進んでいくものです。

(実は、業務監査だけは人心が絡んでくるので、別物なんですが、これも別の機会で記述します。)

 

しかし、F/Sは買収対象企業のみならず、買収を行う側の企業の理念、ビジョン、経営計画、経営戦略等をしっかり把握した者でなければできません

なぜなら、F/Sは買収前にラフなPMIを実行する事にほかならず、PMIは買収対象企業と買収を行う側の企業の統合作業に他ならないからです。

ですから、私は、買収戦略を進めたいという買い手側の企業についてまずトコトン調べ、経営者の考え方に耳を傾け、その上で買収対象企業の提案をするように心掛けています。

その結果、「それは、M&Aではなく新規事業立ち上げ(または自力での事業拡大)を目指した方が良いんじゃないですか?」とアドバイスしてしまい、自らのビジネスを潰してしまう事も多々あります。

「成功する」M&A戦略は、一般的に考えられているよりも、ずっと難しいのです。

 

そんなわけで、M&Aアドバイザーとして信頼のおけるF/Sアドバイスを行うために、PMIについて頭の整理をしておく事がとっても大切で、この書籍を購入しました。